Live in Tokyo 2005

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相曽賢一朗&サイモン・クローフォード=フィリップス
ライブ・イン・トウキョウ 2005


相曽賢一朗&サイモン=クローフォード・フィリップスLive in Tokoy 2005  相曽賢一朗&サイモン・クローフォード=フィリップス
  ライヴ・イン・トウキョウ2005
 Ken Aiso & Simon Crawford=Phillips Live in Tokyo 2005

 相曽賢一朗(Vn)、サイモン・クローフォード=フィリップス(Pf)
 コロンビア GES-13636 \1,575(税込み)

試聴サンプル:ヨハネス・ブラームス アレグロ・アマービレ ※曲の一部を64kbpsで試聴できます。


彼の肉体そのものが歌い、彼の心が奏でているように響きわたる。
聴き手も演奏家と作品とが共に作り出す世界全体に包み込まれるように
音楽に浸り、喜びを実感する、そんな経験に誘うようになってきた。
諸石幸生(音楽評論家)

ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ 第2番 イ長調 Op.100
Brahms: Sonata for Piano and Violin in A major Op.100

J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・パルティータ 第3番 ホ長調 BWV1006
J.S.Bach: Partita for Violin Solo in E major BWV1006

エネスコ:ヴァイオリン・ソナタ 第3番 イ短調 Op.25
       「ルーマニア民族音楽の性格によって」
Enescou: Sonata No.3 for Piano and Violin in a minor Op.25 
       "dans le caractere populaire Roumain"

サラサーテ:チィゴイネルワイゼン Op.20
Sarasate: Zigeunerweisen Op.20

山田耕筰:からたちの花
Kosaku Yamada: Karatachi no Hana

「自然に語りかける演奏」
 現在イギリスにあって、ソリストとして、また室内楽奏者として幅広く活躍すると ともに、バーミンガム音楽院、英国王立音楽アカデミーにおいては後進の指導にも尽 力している相曽賢一朗さんだが、既に広く知られているように我が国では1997年以 来、定期的にリサイタル活動も行って、演奏家としての成長のほどを披露、それは音 楽ファンの楽しみの一つとなって久しいものがある。  日本での修業を礎に、相曽さんはアメリカ、イギリスで幅広い研鑽を重ねてきた。 イヴリー・ギトリス、イタ・ヘンデルといったヴァイオリン演奏の歴史的巨匠の門も 叩けば、ラトルやノリントンらが率いる古楽オーケストラの主要メンバーとしても活 躍、さらに最近では自らカルテットも率いるなど、相曽さんのキャリアを見て驚かさ れるのは、研鑽そして演奏活動の幅が実に多様かつ多彩であることである。そこに は、何か一つの技術あるいはレパートリーを吸収してよしとするのではなく、音楽そ のものに肉薄していく技と心、あるいは美学と精神とでもいうべきものを体得しなが ら演奏家としての自身を鍛え上げていく、そんなこだわりのアーティストとしての姿 が浮かび上がってくるように思われてならない。聴き手には華やいだステージ上の姿 しか見えないものだが、芸術の道はそれほど奥深く、また頂きは高くにあり、踏破し ようと汗を流す芸術家の旅を簡単には終わらせてくれないものなのであろう。  いずれ日本に帰って…といった考えが当初はあったのかもしれないが、相曽さんの 貪欲ともいえる音楽への情熱はいささかも尽きることがなく、ついにはイギリス在住 といった形でさらに本格化し現在に至っている。そして聴き手として実感するのは、 相曽さんの音楽の世界が確実にその密度を濃くし、また人間的な豊かさを増してきて いる事実である。音楽がますます肉体化されてきたとでもいえばよいのか、相曽さん の演奏はただ単に銘器であるヴァイオリンから聴こえてくるのではなく、それを支え る彼の肉体そのものが歌い、彼の心が奏でているように響きわたる。聴き手も演奏家 と作品とが共に作り出す世界全体に包み込まれるように音楽に浸り、喜びを実感す る、そんな経験に誘うようになってきた。  今回リリースされたアルバムは2005年10月に行われた東京でのリサイタルをライヴ 収録したものである。ブラームス、バッハそしてエネスコと、相曽さんがキャリアの最 初期から中心的レパートリーとして取り上げてきた作品ばかりであり、そのことも あってか、各作品は実に的確かつ自然に再現されており、聴き手に各作品の素晴らし さを改めて満喫させてくれる。陰影感あふれる解釈の素晴らしさはもとよりだが、音 色、リズム、フレージング、構成そしてピアニストとのコンビネーションなど、すべ てが調和した美しさとスタイルを誇っており、表面的に巧い演奏とは明らかに次元を 異にする深い味わいがある。  それは肉声で歌い、語る演奏ともいえるが、聴き進むにつれ、以前の相曽さんには なかった積極性というのか輝かしさも感じられる。一段と演奏が伸びやかで、自信に 満ちあふれているし、表現のスケールも大きく、さらに全体に熱っぽい気迫が一貫、 吸引力が強くなっている。ただ単に語る演奏というのではなく、これは語りかける演 奏なのであり、その事実が近年の相曽さんの魅力と充実ぶりを雄弁に物語っているよ うに思われる。   着実に演奏家として成熟しつつある相曽賢一朗さんの「現在」を実感させる説得力 にあふれたアルバムというべきであろう。 諸石幸生(音楽評論家)

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